【私たちが考える人事制度と評価制度】

~企業人事の実経験から考える、これからの人事評価制度(概要)~

 

そもそも「賃金」とは何なのでしょうか?労働基準法(第11条)によれば、「労働の対価(対償)」ということですが、それでは『労働』とは何なのと考えますと、行き着くところは『企業が求める役割期待の遂行』ということになると思います。これらをまとめますと「賃金=企業が求める役割期待の遂行への対価(対償)」と言えます。さらに言えば、概ね「役割期待」≒「職務(ジョブ)」と考えることができますので、詰まるところ「賃金とは、職務(ジョブ)遂行への対価(対償)」と解釈することができます。

そしてこの職務(ジョブ)の遂行の程度を評価することが、いわゆる評価(制度)であるということが言えます。

 

そう考えますと、「人事制度」や「評価制度」はシンプルにできるのではないでしょうか?

 

■「職務(ジョブ)遂行への対価(対償)」が「賃金」であるならば、職務(ジョブ)を具体的に定義すれば、職務と賃金の関係性がシンプルになるのではないでしょうか?具体的には「職務に必要な知識や経験」、「想定賃金」などをジョブディスクリプション(職務記述書)において明記(規定)すれば良いのではないでしょうか?

 

■賃金はあくまでもその職務(ジョブ)に対して支払われるものですから、欧米のようなジョブ型人事制度を導入するならば、たとえば「賃金構造基本統計」等で企業規模や職種毎の賃金レンジが明らかにされていますので、それらの「市場価値」を加味して(各企業の実態に応じて)、各職務毎の賃金を決定していけば良いだけではないでしょうか?本来、評価制度で従業員の賃金を上げ下げする必要はどこにも無いでしょうし、それに固執するから「評価者の甘辛問題」や「説明が付かない不可解な等級、号棒等の給与体系」という、永遠に解決しないテーマが残るのではないでしょうか?

 

■「昇給・昇進」と「評価」を連動させようとするからこそ、評価制度への不公平感という問題が生じるのであって、ジョブディスクリプションを明確にすれば、上位職への昇格に必要な要件が自ずと明確になりますし、賃金その他の処遇も明らかになります。評価制度とは本来、「企業が求める役割期待への今時点の過不足について、企業と従業員の間で認識の齟齬をなくすこと。延いては生産性や企業価値の向上、従業員の市場価値の向上による自尊心の醸成を実現すること」が主たる目的なのではないでしょうか?

 

無理に基本給や職能給(号棒給)に固執するから、会社と従業員の間で人事制度や評価制度に関する認識の不一致が生じ、不信感の醸成をもたらし、制度が形骸化していくのです。実際、現在の人事制度(職能資格制度等)に関して「当社では従業員全員に納得感ある説明ができます」という企業人事の方はいらっしゃるでしょうか?現実を申しますと「人事制度(賃金制度を含む)と評価制度はまったく別物で関係させないこと。関係させること自体が不幸の始まり」が、実は正論なのです。

 

この事実を認識することが、より良い人事制度や評価制度の構築の契機になると考えます。